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父の時代―福島へ捧ぐ

 原発事故のことで、父を責めました。

 水道の蛇口をひねる、それだけで環境破壊にほんのちょっと加担してしまう生活。福島で作った電力を東京で使っている私たちは、略奪者のようなものです。エネルギーと安全を両方盗んでいるのだから。まして、電力会社の社宅で育った私には、加害者という想いが澱のように胸の底に残って消えません。

 豊かな自然と穏やかな気候に恵まれ、のんびりと優しい福島・浜通りの風土。それが原発事故であんなにあっけなく壊れてしまう。美しい故郷の名前が、放射能汚染の代名詞として世界的に有名になってしまう。
 それは、生まれ育った人にとって、どれほど口惜しいことか!! ホンの少し関わっただけの私でさえ、こんなにも胸が痛いのです。事故処理のお粗末さと原子力行政への怒りが収まりません。

「電力会社ってみんなそうなの!?」

 もう時効でしょうか。クリスマス・ソングの流れる街。湿った雪がいつまでもいつまでも降っていた夜のこと。あれから30年近く、父が退職してからも20年以上経ってしまったので。

 福島で、送電線の鉄塔が大量に折れる事故がありました。その結果、この大震災以前には最悪とされていた、大停電が発生したのです。父は当時、福島支店の電力の実務部門のトップでした。

―設計ミス? 鉄塔には雪の重量に十分耐える強度があったんだ。着雪する気象条件があんなに長時間続くのは、百年に一度くらいのものだそうだ。電線が一か所切れると、鉄塔は左右のバランスが崩れ片方に引っ張られる。横の力には弱いから、後は将棋倒しで倒れてしまったんだ。

―計画停電なんて発表するのが間違いだね。俺は勝手にやっていたよ。まず病院。それから官公庁とマスコミに優先的に流して、うるさ型を先に抑えておく。それから、ロウソクを買ってこさせた。後の停電地区は、ロウソクを持って一軒一軒謝りに歩かせたんだ。


 事故が収束するまで一か月程、父は午前2時頃に帰宅。実際にどんな仕事をしているのか、語られることはありませんでした。
 私は、偉そうにして家事を全く手伝わない父の姿しか知りません。家電の修理もロクにできない電気技術者ってナニ?って感じでした。つい最近までは。

 地震、津波、台風、大雪、事故…。すべてのインフラ、道路、鉄道、橋、堤防等に、千年に一度の災害に耐えられるだけの強度を持たせたい。もちろん、自分たちの暮らす家や学校にも。それが理想です。
 しかし実際の問題として、それだけのコストを私たちの社会は支払えるのでしょうか。百年に一度の災害への備えでさえ、完全には賄いきれないのではないでしょうか。

 昔の人の智慧を生かし、すべての危険を避けて暮らすことができればよいのだけれど。しかし、現代日本の人口は江戸時代の約10倍。縄文、弥生時代の何十倍なのやら。
 私たちは、後戻りはできないのです。生きるということの本当の意味は、安定した生活のその遥か向こうにあるのだから。妥協点を見つけるのが、インフラ整備の現実的な対策ということになります。その中に、原子力を含んでよいのでしょうか。私たちは、それを贖えるのでしょうか。本当に?

 三月、普段は車の数も電車の数も少ない田舎道を、大型トラックや満載の貨物列車が、次々と被災地を目指して走っていったこと。
 すっからかんの店頭に、見慣れない商品を必死でかき集めて並べていたスーパー。
 日本各地の制服を着た作業員が、ライフラインの復旧工事に走りまわっていたこと。
 線路や駅があったはずの場所を清掃していた米軍のソウル・トレイン作戦。
 電力が先に復帰した仙台の街では、店頭にコンセント。「どうぞ携帯充電して下さい」と書いてあったそうです。
「震災の前と後で、子どもたちは変わるよ」と語っていた人。

 皆みんな頑張って、命を支えてくれている。それなのにわたしって何もしていない。父の仕事さえ、ろくに知らなかった! 

―放射能っていうのは、ようするに決して死なないハエみたいなものだ。水で流しても埋めても消えない。俺は、作らないようにしたんだ。俺が退職してから出来た所はあるけれどね。

 私が聞きたかったのは、多分そのことでした。すべての世界は私の心が描く幻であって、私の一部。罪もまた、私が自ら贖うべきもの、カルマなのだから。

 大きな事故の際は、呼ばれて采配をふるっていたらしい父。社会的にはなかなか認められない実力派?という点で私は父に似ているのかもしれません。(反骨精神があり過ぎて、上から睨まれやすいところも…)。

 福島から避難して来た方々を支援に伺う予定は、先送りなってしまいました。
 でもこれからは、父と反原発のお話ができそうです。

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テーマ : スピリチュアルライフ
ジャンル : 心と身体

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Who‐kuちゃん

Author:Who‐kuちゃん
20世紀インドの大聖者ラマナ・マハルシ、聖地アルナーチャラとの深い縁を支えに、宗教も哲学も超えて行きます。真の自分をみつけるお手伝いが出来たらいいなあ。
私はわたし。
いつだって幸せ。

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