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死の傍らを生きて――五能線の旅

2018.3.18五能線1 (448x328)
荒々しい海岸線の向こうに浮かぶ、男鹿半島。

 五能線は、海と山の狭間、早春の白神山地を見上げる日本海の沿岸を、ゆっくりと走って行きます。鄙びて古ぼけた、ひと気のない車両、駅、風景。東京の電車を見慣れた目には、すべてが宝物のようです。お天気イマイチでも、ステキ。山は近すぎて良く見えないけれど。

 近いから見えない、というのは自分の親も同じこと。
 父が、他人から見たらどういうタイプの男だったのか、よく分かりません。娘から見た父親って、臭くて口うるさいだけのおっさんだったりするわけで。


2018.3.18五能線3 (1) (448x336)
波打ち際の露天風呂から、日本海に沈む夕日が見えるという、不老ふ死温泉を目指します。

 父は、家事を全くしない、というかできないくせに家の中では妙にいばっている、昔風の男でした。
 昔風の父と、就職経験ゼロで専業主婦の母。
 
 私という精神のDNA。

 とても普通とはいえない?霊的世界をひとり歩む私の両親が、わりと普通っていうのは変な話です。それでも、インド人(=ヒンズー教徒)がインドの精神文化、伝統の中で育っこそインド人であるように、私も日本の、両親の精神文化、伝統の中で育って今の私に成りました。それを否定することはできません。
 日本では、家庭で宗教を教えません。子供は親の背中、手を合わせる姿を見て、信ずべきものを覚えてゆくのが一般的です。それが信仰の形なのだと思います。敢えて神様の名前を呼ばなくたって。

 私という入れ物の中で、何が受け継がれ、何が捨て去られたのか、思わずにいられません。


2018.3.18五能線2 (448x323)
白神の山に抱かれた駅。電車は、1~2時間に一本程度。

 「何故、もっと出世しなかったのか」。それが、父についてよく他人から言われることです。つまり、「あれほど有能な人物なら、一流企業のトップ、もしくは政治家などに登り詰めて然るべきだったのではないか」、という意味でしょう。
 父は、普段は無口ですが、驚くほど弁の立つ男でした。生来の反骨精神と、広範囲の知識に裏打ちされた正論は、聞く人を圧倒したものでした。文章力もあって。(私は有りえない口下手)。そして、技術者としての能力に裏打ちされた、状況判断力、実行力。
 つまり、父が有能だったのは事実でしょう。けれど、大企業なら他にも人材はいくらでもいるんだろう、くらいに私は思っていたけれど?

 父は、電力の技術者だったのです。

 若い頃は生意気過ぎて、上司や目上の人にはイマイチ受けなかったという噂です。それでも、大きな事故や問題の多いプロジェクトを優先的に担当または派遣され、陣頭指揮をしていたそうです。できる奴、使える奴、という評価は貰っていたようですね。

 父から、自分の仕事の話を聞かされたことはありませんでした。家では何もしないでゴロゴロしているだけ。幼稚園くらいの頃には、父親の役割とは何なのか、さっぱり分からなかったくらいだもの。それでも、よくスキーや山登りなどに連れて行ってくれたので、良い父親だったといえるでしょう。マイペースすぎて、ムッとさせられることも多かったけれど。自分の事を、説明しないんだから。
 父が仕事について、そこそこ話すようになったのは、あの震災の後。ほんの数年前です。退職してから歳月が過ぎて、守秘義務が無くなったと判断したのかもしれません。

例えば、「宮城、岩手の震災で、何で秋田が停電するの?発電所なら近くにあるのに」と訊けば、
「大きな変電所があっちの方にあるからだ。電気の性質として…」etc. という感じ。
そして、「馬鹿な奴らめ。廃炉が怖くて、すっかり腰がひけているぞ」と。

――電気の技術って、発電所のタービンを回したり、送電線に上ったりすることだけじゃないんだ? 必要な電力の量も発電量も、日々刻々と変わるもの……そりゃそうだ。どこでどれくらい発電した電気をどうやって街へ、まんべんなく廻すのか?人間の活動をマクロで把握して予想を立てる必要があります。明日の予想はもちろん、5年先、10年先も予想して、計画的に仕事をしているそうです。この予想、予定が実際の消費量を下回ると、即停電というヤバい事態に。知らなかった!

 例えば、コンピュータのハードの一流エンジニアだったら、どんなに複雑な電子回路でも、一遍見ただけでちゃんと分かって、サクサク改造したり直したりできると思います。専門外の人間から見たら、ほとんど魔法です。それって最高にカッコイイ。
 一方、機械でない電力の方の一流技術者って、その種の理解や管理を、都市、あるい国家レベルでやっている感じなのでしょうか。血液を全身に送る心臓と血管について、熟知している名医のように?
 現代社会は、電気への依存の度合いをどんどん高めています。電気が無くなれば、コンピュータもスマホも、暖房も調理も、通信も。結果としてお仕事全部が動かくなくなります。太陽フレアでそれらがすべて失われたら、文明そのものが崩壊すると云われているくらいだもの。そんな社会に私たちは生きています。

 確かに、人間の社会は、長い長い電子回路で繋がれている大きな電子機械のようなものです。
 人間の肉体は、ミクロで微細な電子回路なのだけど、文明社会もまた、大きな肉体をまとった獣のようだね。

 具体的に何の仕事をしているのか、私にはさっぱり分からなかった父ですが、もしかしたらカッコいいのさらに上を行っていたのかもしれません。だって、文明、社会をひとつの電子回路のように仕切る力があったのでしょう。国家予算や交通・流通という国家の大動脈を支配する政治家やお役人とは、別の立ち位置。否、似たような感じ!?
 父の妙に偉そうな態度の一因は、文明、国を自分が支えてきたという自負にもあったようです。(家電や戸の立て付けは上手く直してくれなかったけどね)。
 
 それでは世界はどう見えていたのでしょう。
 
――私の世界。私は今、ここに居ます。
    すべては掌上の幻――


2018.3.18五能線5 (448x306)
こんなうら寂しい風景が愛おしいのって変ですか。絶景露天風呂の方は撮影禁止。

 父と白神の山へ登ったときの思い出を、しきりに話す母。百名山踏破は途中で挫折したけれど、ほんとに山が好きでした。

 父が他人から見て、どういうタイプだったのか、やっぱり分かりません。もしかしたら、潔癖過ぎて真面目過ぎて有能過ぎて、親しみやすいというより近寄り難い人間に見えていたのかなって、今は思っています。私と似たところ、多少は在るのかどうか、やっぱり不明。
 お彼岸には、父が何より好きだった日本酒をお供えして、乾杯しました。母は下戸なので、私ひとりで。

 近所の川沿いの道は、いつの間にか桜が植えられて整備され、「さくらロード」という看板が立っています。それが父のアイデアであったことを、他人から聞かされて初めて知りました。町内会活動を頑張っていたことは知っていたけれど。

 花の季節はもうすぐそこ。
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死の傍らを生きて…3――父の入院

   2017-10-14新城川白鳥 (373x448)

 朝、父が吐血し救急車で病院へ行く事になりました。
 テーブル周りや洗面台が血だらけになって、止まらないので焦ったけれど、舌癌が少し進んで、口の中をちょっと切っただけ…。軽傷と云えば軽傷。けれど、今後このような症状を繰り返す可能性は大という説明を受け、ホスピスへの入院が決まりました。

 もう、家へ戻ってくることは無いのかしら。父の手を引いて川の白鳥を見た、あれが最後のお散歩?

 私にできることなんて、あまり無いのかもしれません。気を入れても、全治できないなら気休めにしかならないかもしれない。
 お酒と塩辛いもの、以前は煙草も大好きだった父。人は己のカルマを自ら受け入れて、生きるしかないのです。


   2017.7.29土崎港夕暮れ2-2

 私は、私にできることをする。今居るこの世界に対して。ただ、それだけ――。
 

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Who‐kuちゃん

Author:Who‐kuちゃん
20世紀インドの大聖者ラマナ・マハルシ、聖地アルナーチャラとの深い縁を支えに、宗教も哲学も超えて行きます。真の自分をみつけるお手伝いが出来たらいいなあ。
私はわたし。
いつだって幸せ。

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